2020年3月に出された、橋下徹さんの「交渉力」を読んでみた。
180ページくらいしかないので、メモを取りながらでも2時間あれば読了できる。
ざっと読んでみて思ったのは、交渉のノウハウを知りたいだけなら、本の前半だけ読めばいいかな……ということだった。
読んでいて感じたことをまとめてみる。
交渉前は「事前の準備」を大切に
交渉は、始まる前の準備で90%決まる。
相手と話をするなら、「これは絶対に譲れない」「これは相手の条件を飲み込んでも良い」といった項目を、自分なりにきっちり分けてから臨むべきだと主張していた。
譲れる・譲れないところが具体的になると、わりと小さなことで折り合いがついてないことも判明してくる。
ポスターの例が分かりやすかった
本の中でいちばんしっくりきた具体例だったのは、選挙のポスターデザイン。
文字の大きさ・背景の色・キャッチコピー・写真の選定など、自分のイメージとクリエイターとの間で揉めたことがあったらしい。
このとき、抽象的に「このデザインは気に入らない!」と丸投げするようでは、お互いに平行線のまま。
なぜダメなのか、どこが気に入らないのかを具体化して、折り合いをつけていったんだという。
まあ、他のビジネス書でも似たようなことは書かれてそうだな〜と感じた。
準備が終わったら「3つの軸」から交渉スタート
自分の要望の整理が終わったら、
- 利益を与える
- 合法的に脅す
- お願いする
の3つを軸に、弁護士時代から知事時代までの経験からどのように交渉をしてきたのかを紹介していた。
お互いに譲歩する「協調的交渉」と、逆に一歩も譲ろうとしない「敵対的交渉」の立場によって違いがあるのが面白かった。
利益を与える(譲歩する)
こちらがマイナスにならないよう、相手には利益になるものを見つけだす。
最初に難しい条件を出して、少しずつ優しくすることで、あたかも得をさせたように見せる「仮装の利益」を作り出すのが交渉の秘訣なんだという。
テレビでやっている通販番組を思い浮かべると、分かりやすい。
「この商品を買うと、あなたにこんなメリットや効果がありますよ!」と提示しつつ、最初に定価を示す。
そのままだと高いので、いま申し込めば安く買うことができるよ、といった感じだろうか。
人間は欲が強く、譲るものは最小限にして得るものだけ得ようとする。それを封印できるかどうかで、最終的に成功するかどうか決まるのだ。
本の中では知事時代の経験をもとに語られており、イメージはしやすい。
だが、一般人がマネできるような体験ではない。いまの自分の状況・立場に当てはめて、考える必要があると思った。
合法的に脅す
交渉を決裂させたら後々トラブルになりそうだな〜と考えて、弱腰になるなという主張。
法律の中でなら喧嘩も辞さない迫力をもって、事前に圧をかけることで交渉は進めていくものだと書かれている。
もちろん、脅すといっても合法であることは大前提。
たとえ決裂しても、最後は握手で終わらせて、侮辱はしない。そうすれば、人間関係だけは決定的に壊れることがないから。
人間はどこでつながっているか分からないし、この考え方は大切にしたいな、と思った。
お願いする
上記2つでも通らないなら、ただお願いするしかない。
感情に訴えてもダメなら、スパッと諦めることも大切。
ほとんど本文には出てこなかった項目だが、引き際を自分で決めておくのは、相手のためにもなるのかもしれないなと思った。
本の後半は読まなくていい
第4〜6章では、前半の理論を具体例として紹介している。
- 知事時代にやってきた地方や団体との予算交渉術
- トランプ大統領がどれだけ交渉に長けているのか
- 憲法改正についての個人的な思い
など、橋下さんがやってきた政策や考え方も知りたいなら、そのまま読み進めてもいいかもしれない。
ただ、題名にある「交渉力」の理論は、前半で終わり。なので、交渉のノウハウだけ知りたいなら、1〜3章だけ読めば十分だ。
わたしは後半の章、あまり覚えてないし興味も湧かなかったが……
前半だけでも、読んでみる価値は十分にあると思った。