『人を動かす』は、人間関係や対人コミュニケーションの基本を説いたデール・カーネギーの名著です。
ただ、いざ読もうと探してみると、創元社版や新潮社版、マンガ版など種類が多すぎて「一体どれを買えばいいの?」と迷ってしまいますよね。
最初の1冊であれば、2023年に改訂された創元社の『改訂新装版』(携帯用なら『改訂文庫版』)を選ぶのがおすすめです。
今回は、現在流通している各書籍の違いをもとに、自分に合った選び方を分かりやすく比較して紹介します。
| おすすめの版 | おすすめ度 | 特徴 |
| 改訂新装版(創元社) | 2023年改訂の最新版。付録あり | |
| 改訂文庫版(創元社) | 上記の文庫サイズ。付録なし | |
| 13歳から分かる!人を動かす | 要点を知るためなら。翻訳ではなく解説書 | |
| マンガで読み解く 人を動かす | 1冊完結。現代ビジネスのストーリーで全体像を素早く掴む入門向け | |
| 完全版(新潮社) | 1936年初版原稿を復元。創元社版を読んだ後、気になる場合。 |
創元社版と新潮社『完全版』の違い
『人を動かす』には、大きく分けて2つの系統があります。
創元社版(山口博 訳)
現代向けアップデート版(改訂新装版/改訂文庫版)1958年の全訳から続く定番。2023年に約40年ぶりの改訂を行い、事例や表現を現代向けに刷新。
新潮社版(東条健一 訳)
1936年初版の内容を復元した版。その後の改訂で削られた第5章「敵を味方に変える方法」(手紙の実例「奇跡を生む手紙」など)や原稿を収録。
違いの核は
- 元にした版の年代(底本)
- 章立て
の2つです。
| 比較項目 | 創元社『改訂新装版/改訂文庫版』 | 新潮社『人を動かす 完全版』 |
| 訳者 | 山口博 | 東条健一 |
| 元にした内容 | 2023年大改訂版(1981年改訂より) | 1936年発売当初の内容 |
| 構成 | 4部30原則(改訂新装版のみ、付「幸福な家庭をつくる七原則」を収録) | 全6章(第5章に手紙の実例、第6章に家庭の7原則を収録) |
| 本文の手直し | 時代に合わない事例を一部入れ替え | 改訂で削られた原稿を復元 |
| 文体の印象 | 現代的で柔らかい | 初版特有の硬さがある |
| 読む順番 | 最初の1冊向け | 創元社版を読んだ後の2冊目向け |
迷ったら、まず創元社版を読み、原点が気になったら新潮社版に進む順番で大丈夫です。
なお、かつて流通していた角川文庫版(田内志文 訳)は、権利の問題により現在は絶版となっています。
よく迷いやすい書籍を比較してみる
『人を動かす』を選ぶ際によく候補に出てくる書籍を、独断で比較してみました。
① ひとまず読むなら 創元社の「改訂新装版」

活字本でしっかり読みたい場合、候補に挙がるのは
- 『改訂新装版』(創元社)
- 『完全版』(新潮社)
です。
創元社『改訂新装版』は、現代の状況に合わせて事例が見直されており、今の仕事や人間関係の話としてスムーズに読み進められます。
一方、新潮社『完全版』は1936年の初版に沿った構成で、創元社版にはない第5章「敵を味方に変える方法」(手紙の実例「奇跡を生む手紙」)などが収録されています。
繰り返しになりますが、とくにこだわりが無ければ、2023年に改訂された創元社の『改訂新装版』か、付録がないものの本編(30原則)は同じ構成でコンパクトな『改訂文庫版』がおすすめです。
耳からインプットしたいなら「オーディオブック(Audible版)」
なお、移動中や作業中の時間を活用したい場合は、オーディオブックもいいかもしれません。
現行の音声版であれば、Audible配信の『人を動かす 改訂新装版』がおすすめです。上記の改訂新装版をそのまま朗読した音源で、すきま時間に少しずつ聴き進めやすい形となっています。
② 要点だけでいいなら「13歳から分かる版」

エッセンスだけを手短に把握したい場合、代表的なのが
- 『13歳から分かる!人を動かす』(日本図書センター)
- 『こども「人を動かす」』(創元社)
の2冊。どちらも原書の全訳ではなく、原則をやさしく解説した、いわゆる入門書です。
『13歳から分かる!人を動かす』は主要な30原則を取り上げ、スーパーで働く少年を主人公にした日常のストーリーや身近な例を交えながら、豊富な図解とともに解説しています。ただし、夫婦や家庭での向き合い方(「幸福な家庭をつくる七原則」など)に関するパートは省略されています。
一方、齋藤孝『こども『人を動かす』』は小学生向けに書かれており、「カーネギーおじさん」のアドバイス形式で、書き込み式のワークや修了証が付いているのが特徴です。
大人が読む想定で選ぶなら、より要点がまとまっている『13歳から分かる版』がいいと思います。
③ 活字が苦手なら「マンガ版」

マンガ版で比較した場合、候補に上がるのは
- 『マンガで読み解く 人を動かす』(創元社)
- 『マンガで読む!14歳からのカーネギー「人を動かす」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
です。
『マンガで読み解く 人を動かす』は、1冊完結(216ページ)で全30原則をカバーしており、日本の現代ビジネスや身近な人間関係を舞台にしたストーリー仕立てになっています。職場の対人関係や日常会話でどう原則を活かすかが直感的にイメージしやすく、短時間で全体像を把握する用途に向いています。
一方、『マンガで読む!14歳からのカーネギー「人を動かす」上・下』は上巻168ページ・下巻176ページのオールカラー仕様です。マンガというよりは挿絵とともに読み進める、絵本のイメージが近いかもしれません。
カーネギー本人を登場させて原著のエピソードに沿った構成をとっているため、世界観を忠実に追いたい場合には適していますが、2冊揃える手間やコストがかかります。
よって、マンガ版で要点をつかむのであれば、まずは創元社の『マンガで読み解く 人を動かす』がおすすめです。
購入前にチェックしておきたい、よくある疑問
その他、気になりやすいポイントをまとめました。
- Qすでに旧版(1999年の新装版など)を持っている場合、買い直したほうがいい?
- A
2023年の大改訂は、原則や主張そのものが変わったわけではありません。古い言い回しやジェンダー描写の見直しに加え、時代に合わなくなった事例の一部が新しいエピソードへ入れ替えられたものです。
もしすでに旧版が手元にあるなら、急いで買い直す必要はありません。
- Q原著は1936年の本だが、今の仕事や人間関係にも使えるか?
- A
使えます。
『改訂新装版』は、2023年の大改訂で時代にそぐわない事例が新しいエピソードに入れ替えられています。古さが気になる場合も、まずこの版を選べば読みにくさは抑えられます。
- Q創元社版にない内容を読めるのはどれ?
- A
初版に収録されていた第5章「敵を味方に変える方法」(手紙の実例「奇跡を生む手紙」を含む)まで読めるのは、新潮社『完全版』です(かつて流通していた角川文庫版にも収録されていましたが、現在は絶版)。
手紙の実例など、初版ならではの内容を確かめたい場合は新潮社版を選ぶといいかもしれません。
- Qディスカヴァーの『超訳 カーネギー 人を動かす』はどう違う?
- A
原著の長いエピソードを省き、原則のエッセンスや言葉を、見開き1メッセージ形式でまとめた本です。通常版(単行本)と後から出た「エッセンシャル版(文庫サイズ)」がありますが、判型と価格が異なるだけで収録内容(181項目)は同じです。
「物語や事例は不要なので、刺さるフレーズや結論だけを短時間で確認したい」という人には向いていると思いますが、前後の文脈や具体例が削られている分、実際の対人関係や仕事にどう活かすかが少し掴みにくい面もあります。
サラッと要点を理解するだけなら、日常のストーリーや身近な例を、豊富な図解を交えて解説されている『13歳から分かる!人を動かす』を選んだ方が、スッキリしていて読みやすいと思えました。
おわりに
本記事では原作を軸に、各出版社が刊行する派生書(マンガ・入門書など)を中心に比較してみました。
最後に、記事で触れた主な版のスペックをまとめておきます。ご自身に合うものを比較する際の参考にしてください。
| 書名 | 仕様・メモ |
| 人を動かす 改訂新装版 | 四六判 352P/ハードカバー/2023年大改訂(創元社) |
| 人を動かす 改訂文庫版 | 文庫判(A6判) 320P/本編は新装版と同じ・付録なしの携帯版(創元社) |
| 人を動かす 完全版 | 四六判変型 352P/1936年初版復元・全6章(手紙の実例、家庭の7原則を収録)(新潮社) |
| 新訳 人を動かす | 文庫判 413P/角川文庫/手紙の章収録(KADOKAWA)、絶版 |
| マンガで読み解く 人を動かす | 四六判 216P/コミック/全30原則コミカライズ(創元社) |
| こども『人を動かす』 | B5変 80P/小学生向け解説・修了証付き(創元社) |
| マンガで読む! 14歳からのカーネギー「人を動かす」上・下 | A5 上巻168P・下巻176P/オールカラー/全2巻(ディスカヴァー・トゥエンティワン) |
| 13歳から分かる!人を動かす | A5変 136P/中高生向け入門書(日本図書センター) |
| 超訳 カーネギー 人を動かす | B6 240P/エッセンス抽出(ディスカヴァー・トゥエンティワン) |
| 人を動かす 改訂新装版(オーディオブック) | 再生時間 約10時間42分/Audible版・2023年改訂新装版を朗読(創元社) |


書店ではディスカヴァーの『超訳 人を動かす』も見かけますが、事例を省いたフレーズ集のような構成のため、候補からは外しています。要点だけを知りたい場合も、後述する『13歳から分かる版』の方が理解しやすいため、詳しくはFAQで解説します。