中学生の読書感想文、どんな本を選べばいいのか分からない……
そんなときは、ページ数よりも「読みやすい作品」を選んだほうがいい。ストーリーが短くても漢字ばかりだと、途中で飽きてしまう。私もそうだった。
今回は
- よく読まれているベストセラー
- 最近、改訂されて読みやすくなった
- 中学生にこそ共感できるストーリー
などを中心に、「とにかく読みやすい本」を、アンケートによりピックアップ。
ササッと読み流しながら、気になった作品をチェックしてみよう。
- かがみの孤城(辻村深月)
- 死神の精度(伊坂幸太郎)
- 夏の庭 The Friends(湯本香樹実)
- 星の王子さま(サン・テグジュペリ)
- 帰宅部ボーイズ(はらだみずき)
- きよしこ(重松清)
- 二分間の冒険(岡田淳)
- 秒速5センチメートル(新海誠)
- 君の膵臓をたべたい(住野よる)
- 空色勾玉(荻原規子)
- 時計坂の家(高楼方子)
- 14歳からの哲学 考えるための教科書(池田晶子)
- いのちの車窓から(星野源)
- 幸福な食卓(瀬尾まいこ)
- きみの友だち(重松清)
- 羊と鋼の森(宮下奈都)
- りかさん(梨木香歩)
- 狐笛のかなた(上橋菜穂子)
- 窓ぎわのトットちゃん(黒柳徹子)
- スローカーブを、もう一球(山際淳司)
- 少女パレアナ(エレナ・ホグマン・ポーター)
- 青い鳥(重松清)
- 七十歳死亡法案、可決(垣谷美雨)
- 優しい死神の飼い方(知念実希人)
- マリと子犬の物語(藤田杏一)
- チョコレート工場の秘密(ロアルド・ダール)
- ぼくが燃えてしまう(岡本文良)
- コンビニ人間(村田紗耶香)
- スノードーム(アレックス・シアラー)
- 彼女のこんだて帖(角田光代)
- はてしない物語(ミヒャエル・エンデ)
- ホームレス中学生(田村裕)
- ふたりのロッテ(エーリッヒ・ケストナー)
- 蛇行する川のほとり(恩田陸)
- 蹴りたい背中(綿矢りさ)
- 少年少女飛行倶楽部(加納朋子)
- きみはいい子(中脇初枝)
- 西の魔女が死んだ(梨木香歩)
- 下町不思議町物語(香月日輪)
- ボッコちゃん(星新一)
- ファンタジーが生まれるとき(角野栄子)
- きりこについて(西加奈子)
- トリツカレ男(いしいしんじ)
- 謎解きはディナーのあとで(東川篤哉)
- 星になった少年(坂本小百合)
- まゆみのマーチ(重松清)
かがみの孤城(辻村深月)
554ページ

中学生7人が、謎の孤城に集まる。それぞれの子は皆なんらかの悩みを抱えている。7人でお互いを知りながら、そして知ってもらいながら、だんだんと自分の出口を見つけていく物語。ぜひたくさんの中学生に読んでもらいたい。

主人公含めて主な登場人物がみんな中学生で、それぞれの環境や悩みの中で助けあって成長していく物語です。感動要素だけでなく、ファンタジー・サスペンス要素もあり、話の展開がとにかく面白いので中高生におすすめです。ページ数は多いですが、あっと言う間に読めます。

学校で居場所がない7人の学生の心の成長や葛藤を感じられる内容です。ファンタジーの要素を含んでおり、中学生向けだと思います。同じような年代の方に悩んでいるのは自分だけではないんだということを知ってもらえる素敵な本です。
死神の精度(伊坂幸太郎)
280ページ

死神が仕事をひとつひとつこなしていくお話なのですが、そのひとつひとつに悲喜こもごもがあって、悲しくなったり、少し笑ったり、感動したりする不思議な小説です。人間は一人で生きている様に見えて、実は色々なところで繋がっているという事を、気づかせてくれる本でした。
夏の庭 The Friends(湯本香樹実)
218ページ

死というものは当たり前に身近にあるものだと、再確認させられた作品です。死を恐れるのではなく、死ぬまでにどれだけのことができるのか、人との関わりがいかに大事なのか考えさせられました。登場人物が小学校6年生ですが、普段読書をしない中学生にこそ読んでほしい内容です。1994年に映画化されています。
星の王子さま(サン・テグジュペリ)
160ページ

よく小学生向けの児童書として見かけますが、小学生には難しいので、中学生ぐらいからおすすめなのではないかと思います。大切なものは目に見えないということ、大切な人をちゃんと大切にすることのメッセージが詰まった素敵な作品ですので、身近な友達や家族との関係性をあらためて考えるいいきっかけになります。

大人になる事で見えなくなっていく、大切なものを教えてくれた一冊です。大人にこそオススメしたいのですが、これから大人になっていく学生にも読んでほしい作品ですね。王子の発言をいつか思い出して、日常に押しつぶされないように生きていければと思いました。

ページ数が少ないながらも、一番大切なことは「目に見えない」ことと「想像力をはたらかせる」ことを教えてくれた作品。70年以上、世界各国で愛されてきた物語で、ミュージカルや映画化もされています。子供ながらに考える純粋な疑問を、改めて考えさせられるきっかけになりました。
帰宅部ボーイズ(はらだみずき)
350ページ

いろんな事情があって帰宅部になってしまった中学生4人組の、疾風怒濤の中学生ライフを描いた青春物語です。現代の中学生にとって、「部活」がいかに大きな存在をしめているかがよくわかります。はらだみずきさんがサッカーものの小説シリーズが多いので、この本をきっかけにハマるといいかもしれません。
きよしこ(重松清)
254ページ

吃音を持つ少年が小学一年生から高校生になるまでのお話しです。言葉がつっかえて上手く話せないために様々な辛い経験をしますが、その時々に出会ったクラスメイトや身近な人との交流を通して成長していきます。その成長の過程は、時には自分と重ね合う部分があり、心が震える感情が沸き上がります。今自分にコンプレックスを持って悩んでいる人や友達付き合いに心を疲弊している人にぜひ読んでもらいたい一冊です。きっと一筋の光を見つけることが出来るでしょう。
二分間の冒険(岡田淳)
237ページ

子どもしかいない不思議な世界に迷い込んだ主人公が仲間を作り、「一番たしかなもの」を探して竜を退治する物語です。何度読み返しても飽きない息もつかせぬ展開で、冒険ものの定番とし長く愛されています。たった2分の間に起こった不思議なファンタジーなのがすごく好きです。
秒速5センチメートル(新海誠)
191ページ

「君の名は。」で一躍有名になった、新海誠さんの作品です。恋愛映画を見て感動したことのある人なら、恋に恋する淡くも切ない2人の気持ちに、とても共感できると思います。ここまで誰かを好きになるってとても素敵な体験で、たとえ別れてもいい思い出になっている、そんな体験をしてほしいと思いました。
君の膵臓をたべたい(住野よる)
281ページ

言葉もそれほど難しい言葉は使われていないので、読みやすいと思います。会話文が主で、僕と女の子とのやりとりがクスッと笑えたり、切なくなったりと感情がとても揺れ動きます。続きが気になり、スラスラと読めてしまいますし、最後にこのタイトルの意味がきちんとわかった時には涙があふれて止まらなくなりました。映画化もされてるので、合わせて見るとまた違った面白さがあると思います。
空色勾玉(荻原規子)
366ページ

シリーズ3部作の第1作目ですが、1冊ごとにストーリは完結しているので問題ありません。古事記や日本書紀をモチーフにしたファンタジーで日本の歴史の勉強にもなりますが、ベースは恋愛物語なので、人間らしい神様がたくさん出てきます。
時計坂の家(高楼方子)
339ページ

とにかく初めから終わりまで幻想的な話です。登場人物にはみなそれぞれ秘密があり、その秘密が少しずつ明かされていくにつれて、一人一人の悩みや弱さが浮き彫りになってきます。メッセージらしいものが明確にあるわけではないですが、主人公を含めて人の多面性をよく描いていると思います。
14歳からの哲学 考えるための教科書(池田晶子)
259ページ

当たり前のことに目を向け、自分なりの考えを模索していくことの楽しさや大切さが書かれています。自分はなぜそう思うのか、他人はなぜそう思うのかなど、思春期になるといろいろな悩みが増え、心が苦しくなっていくこともあると思います。そんなときに自分自身を見つめるための手助けをしてくれる本です。
いのちの車窓から(星野源)
197ページ

星野源さんの日常を垣間見ることが出来るエッセイ集。目で見て感じたことを、音楽家の感性とフィルターを通した言葉がつづられています。彼の歌の世界観と役者としての在り方がとても面白く、ときには考えさせられる内容です。
幸福な食卓(瀬尾まいこ)
234ページ

現代は様々な形で暮らす家族が増えています。それでも父と母、兄弟や自分が仲良く食卓を囲んでいる風景というのが理想だと誰もが思うでしょう。この作品はそんな常識からは少し外れた、でも確かに強く繋がり合っている家族のお話です。たとえ周りから見れば変わっていても、「普通」や「幸福」の形は人それぞれなのだと気付かせてくれる作品です。
きみの友だち(重松清)
332ページ

人間関係にデリケートなとき、友達関係に悩んだとき、孤独を感じときに読んでほしい作品です。悩みなんかなさそうに見えても、みんな同じように色んなことを悩んだり、傷ついたりしている。そんな中で、人に優しくしたり、優しさを感じたりすることができれば良いなと思えます。
羊と鋼の森(宮下奈都)
243ページ

ある少年が一人のピアノ調律師と出会い、ピアノ調律師として成長していく物語です。音楽とはかかわりがなくても、将来や進路を決めていかなければならない中学生に読んでほしい作品ですね。人との出会いや体験は、自分の意志で進めていく大切さを教えてくれます。

夢について考えさせられる本でした。追いかけたい夢があっても、それが急に閉ざされてしまう時もある。自分がそうなってしまった時、一緒に頑張ってきた大事な人がそうなってしまった時、それをどう受け止めればいいのか。作中ではそれをいい方向に変換しようとする姿に心を打たれました。将来について考え始める中学生にはぴったりだと思います。
りかさん(梨木香歩)
262ページ

女の子と不思議な力をもつ日本人形”りかさん”のお話。主人公が小学生の女の子なので、あまり読書の習慣のない中学生にもとっつきやすい内容かと思います。自分は”リカちゃん”のお人形が欲しかったのに、おばあちゃんがくれたのは”りかさん”でした。プレゼントをもらって「これじゃないのに」と感じたことがあるなら、ぜひ読んでほしい作品です。
狐笛のかなた(上橋菜穂子)
342ページ

呪術などの単語が飛び出す、和風ファンタジー作品。獣の奏者と同じ作者の作品で、シリーズ化もしておらず学生にもスラスラと読みやすい作品となっています。また、主人公と狐の少年との切ない恋の行方には、きゅんきゅんして先が気になること間違いなし!
窓ぎわのトットちゃん(黒柳徹子)
232ページ

普段なにか奇抜なことをすると、とても居づらくなるこの世の中。どこの学校に行っても、まわりの子からしてみたら風変わりなことばかりしていたトットちゃん。トモエ学園で小林先生に会い、「きみは、ほんとうは、いい子なんだよ。」と認められ、個性のある子だって認められる物語です。なんとなくまわりと合わないと感じているなら、ぜひ読んでほしいですね。
スローカーブを、もう一球(山際淳司)
254ページ

短編集なので、読書が苦手なお子さんも1作だけでも読めるのではないかと思います。それでいてそれぞれの作品が中身が濃く、私もその中どれを感想文にしようか悩むくらいの作品です。ノンフィクションなのにドラマチックで「事実は小説より奇なり」を初めて感じ、山際淳司さんの本にハマって行くきっかけになった1冊でした。
少女パレアナ(エレナ・ホグマン・ポーター)
284ページ

まだ11歳の少女がどんな苦境なのかでも喜びを見つけ出そうとする「喜びの遊び」を通して、身近な人だけでなくやがては町全体を喜びの渦に巻き込んでいく作品です。最後まで読み終わる頃には、いつの間にか自分自身も喜びに包まれて前向きになれます。2015年に新訳が出たため、さらに読みやすくなりました。アニメ化やディズニー映画化されるほどの物語ですから、読んで損はありません。
青い鳥(重松清)
326ページ

他人の気持ちを想像することがむずかしいと感じたとき、ぜひ読んでほしい短編です。重松清さんの文章は、難しいところがなく、簡単な文章で体に染み込むようにスルスルと入ってくるので、読書嫌いな子も読みやすいと思います。とくに、本の中にある短編『ハンカチ』は、主人公の心の移り変わりがきれいに描かれていて、主人公の体験を追いながら作品を楽しめると思います。
七十歳死亡法案、可決(垣谷美雨)
310ページ

「日本のために死んでください」という表紙の言葉。内容も高齢者社会になり、国家財政が破綻寸前、そして政府は70歳以上になったら安楽死という法案を可決するとんでもないお話です。ですが、今現在日本のあちこちで起こっている介護問題、今後の日本が直面する医療費の問題などが分かりやすく書かれています。その中で、家族とは何か、自分ならどう思うかなど読み手によってかなり感想が異なる小説です。今の自分、70歳になった頃の自分を考えるといろいろ考えさせられます。最後の終わり方も素敵なのでぜひ読んでいただきたい作品です。
優しい死神の飼い方(知念実希人)
409ページ

犬の姿で丘の上病院に派遣された死神のレオがホスピスの患者の未練をたちきり、成仏させていく物語。一生懸命謎を解き、患者の残された時間を有意義のある穏やかな時間に変えていくレオを応援し、高貴な死神であるレオの言動にクスッとさせられます。読み終わった後に、優しい気持ちになれ、生死についても考えさせられる素敵な作品です。
マリと子犬の物語(藤田杏一)
288ページ

新潟中越地震にまつわる人と犬の絆を描いた物語。映画にもなっており、始終涙が止まらなくなる感動の実話です。普通に過ごしてた毎日が地震により一瞬で変わる怖さと、その生活の厳しさ、住人同士の支え合い、兄妹愛、動物愛が胸に響いてきます。マリの頑張りや、マリを心配して行動する兄妹の姿には涙涙です。最後まで読むと間違いなく心があったかく、優しい気持ちで満たされます。
チョコレート工場の秘密(ロアルド・ダール)
269ページ

2005年にティム・バートンが映画化した、ファンタジー物語です。態度の悪い子が痛い目にあったり、楽しいだけではなく、ブラックなコメディも盛り込んでいて、一筋縄でいかないところが面白いです。
ぼくが燃えてしまう(岡本文良)
280ページ

福島県に住む主人公の実体験を記したものです。足の骨の異常により、普通の小学校にかよえなくなり、養護学校に転校します。足の骨の異常は定期的な手術が必要でした。母親をはじめ、周りの人たちへの「感謝の心」を身につけていく物語です。
コンビニ人間(村田紗耶香)
151ページ

コンビニは誰でも入る場所で、店員=主人公=作者です。主人公がコンビニの部品となり、コンビニというものが色々な人を呼び関わりを持つ事で人間を変えてしまいます。生活そのものをコンビニに染まっても、自分と違う、友達とも違う、クセがある人に会った体験ができます。コンビニの店員として染まった人の思いを体感できる作品です。
スノードーム(アレックス・シアラー)
423ページ

人間の持つすべての感情が詰まっています。主人公の年齢は上ですが、どこか学生じみたところがあり、中高生でも入り込みやすい内容・文面です。400ページ弱ありますが、むずかしい言葉もなく一日で読破でき、多感な時期にこそおすすめできる一冊です。
彼女のこんだて帖(角田光代)
224ページ

主人公の「彼女」達は学生ではありませんが、女子学生にぜひおすすめしたい一冊です。女性同士の友情や、恋人との付き合いなど、大人になったからと言ってそう変わるものではありません。大人=煌びやかなだけではなく、それぞれ葛藤・成長して行く「彼女」達と、ご褒美である美味しい食べもの。短編集なので読みやすく、また、文面が柔らかいので頭に入ってきやすい作品です。舞台が東京ですが、地方に住んでいても楽しめます。
はてしない物語(ミヒャエル・エンデ)
589ページ

ファンタジーの最高峰の作品です。一見ページ数が多く見えますが、ゲームやライトノベルに触れたことがあれば、目にする空想上の生き物・主人公がトリップ(正確には意識だけですが)するなどの点に強く引き込まれると思います。想像力を育てるのにとても適した一冊で、現実と理想を混ぜ合わせたファンタジーなので、とっつきやすい本です。
ホームレス中学生(田村裕)
191ページ

主人公の裕さんが中学校時代に体験したできごとを、面白おかしく、時には、悲しく描いた人間模様の本です。現代の中学生に足りない部分、我慢することなども分かりやすく表現されていて、とても共感できた作品のひとつです。
ふたりのロッテ(エーリッヒ・ケストナー)
237ページ

それぞれ片親の家庭で暮らす、ルイーゼとロッテ。お互いの見た目が似ていることから、入れ替わって生活するストーリーです。1人は父親との暮らしを体験し、もう1人はあこがれの母親との暮らしを体験……そして、バレたときの衝撃のラスト。傑作です。
蛇行する川のほとり(恩田陸)
316ページ

昔ある女性が殺された事件。当時の現場付近にいた4人の幼馴染がそれぞれの視点で振り返りながら、徐々に真実を明らかにしていくミステリー小説です。最後の最後に判明する真相はあまりに切なく、それでいて読後は何ともいえないすっきりした気持ちになる名作です。
蹴りたい背中(綿矢りさ)
140ページ

第130回芥川賞受賞作品であり、文学作品として高い評価を受けている小説です。主人公は教室独特の人間関係が苦手で、うまくなじむことができていません。多くの中高生が直面する友人関係の悩みとスクールカーストが生々しく描かれていて、すばらしい作品だと思います。
少年少女飛行倶楽部(加納朋子)
350ページ

興味のなかった「飛ぶ」という世界に、中学生の主人公が飛び込む物語。自分にとって新鮮な考えを持つ人との出会いと、中学生らしく仲間と協力して目標を達成しようとする初々しさがまぶしい作品です。部活動というほとんどの中学生が属しているコミュニティのお話ですが、飛行倶楽部という現実とフィクションの境にあたる部活をテーマとしていること、強烈なキャラクターの登場人物、彼らが背負うそれぞれの多様な生い立ちや考えなど、本を読む習慣のない人も飽きずに読了できると思います。
きみはいい子(中脇初枝)
319ページ

2013年に第28回坪田譲治文学賞を受賞し、2015年に高良健吾・尾野真千子主演で映画化した作品です。虐待を受ける子、虐待をはたらいてしまう親、それに気づきながら何もできない教師……さまざまな立場から描かれた物語です。事件などのニュースが多い中で、社会問題として考えるきっかけになる一方、「同じクラスにも悩みを抱いた子がいるかもしれない」と意識せざるをえないような気持ちにさせられます。読むに堪えない残虐さはないものの、十分に読者の感情を揺さぶられました。最後にかろうじて救いを感じさせるところも、中学生にとって読後感がよいのではないかと思います。
西の魔女が死んだ(梨木香歩)
226ページ

中学生になり不登校になった「まい」がおばあちゃん(西の魔女)の家で過ごす物語です。ママもおばあちゃんも、「まい」の不登校を否定することなく、またおばあちゃんのやさしい言葉に包まれていて、大人が読んでもでも引き込まれます。現実の社会ではできない素敵な体験や生活もあれば、時には残酷で納得いかないこともある。友達関係で悩んでいる人におすすめしたい本です。
下町不思議町物語(香月日輪)
187ページ

挿し絵がほどほどにあり、現代ファンタジー感あるので抵抗なく読めると思います。ちょっと勉強ができない、周りと違って方言のある、家族とも折り合いがうまくつけられていない主人公が「心の拠り所」として遊びに行くのは、不思議なモノが残っている町。その過程で接していく大人達は、主人公を優しく時に厳しく導いてくれます。人間関係に悩みやすい時期だからこそ、読んでほしい作品です。
ボッコちゃん(星新一)
272ページ

ショートショートの巨匠・星新一の近未来SFシリーズで、最も愛されている作品です。テレビ化もされている有名作品でもありますが、ユニークな着眼点やユーモアあふれる文書力で多くのできごとを想像させてくれます。
ファンタジーが生まれるとき(角野栄子)
180ページ

ジブリ映画『魔女の宅急便』の原作者がどのように育ち、お話が生まれたかが書かれています。幼いときに母を亡くし泣いてばかりいた作者を助けたのは、自らの想像力でした。受験から先へ続く将来についてや、学校生活での悩みなど、中学時代には誰もがなにかの不安を抱くと思いますが、自分と重ねて読むことで助けになるものと思います。現実的な大人になることを求められがちですが、子ども時代からの想像力を持ったまま大人になったっていいのだと思わせてくれる本です。
きりこについて(西加奈子)
217ページ

「きりこは、ぶすである。」という一文で始まる、パンチのきいた作品。正直、子供におすすめできるきれいな内容とは言いがたいですが、「容れ物も、中身も込みで自分なんやな」と認識し、独り立ちしていくきりこに勇気をもらえる本です。外見・中身その他もろもろ含めて世界にたった1人の自分であるということを気づかせてくれます。
トリツカレ男(いしいしんじ)
176ページ

なにかに夢中になるととりつかれたように徹底的にのめり込む「トリツカレ男」、ジュゼッペが主人公のお話。夢中になったら何か得になるようなことがあるとは限りませんが、何かに夢中になること自体がその人にとって幸せだし、そのことがその人を魅力的に見せるのだということを、ジュゼッペはその背中で教えてくれます。何かに夢中になったことがない人、特に何かに夢中になることにためらっている人にはぜひ読んでほしいです。童話を思わせる語り口もとっつきやすいと思います。
謎解きはディナーのあとで(東川篤哉)
348ページ

2011年にドラマにもなっていた作品であり、自分が中学生ぐらいのときに読んでいたものです。お嬢様でもあり、刑事という変わった一面をもった主人公と、主人公の執事がともに事件を解決していくストーリーで、主人公と執事の掛け合いがとにかく面白いです。個性豊かなキャラクター達も、読んでて飽きません。事件も複雑ではなく、誰が犯人なのか気軽に推理できるのもおすすめポイントですね。
星になった少年(坂本小百合)
157ページ

中学生と同じくらいの年の男の子が主人公なので、感情移入がしやすいと思います。また、短い人生の中で全力で夢を追いかけた少年に自分もがんばる力がもらえます。文字も大きく優しい文章で、軽めの読み物ですが、読んだ後に良い話を聞いて一回り大きくなれるような作品です。
まゆみのマーチ(重松清)
319ページ

この本には6つの短編が入っており、約60ページほどで完結します。どの話もとても面白いですが、とくにオススメなのは「セっちゃん」です。最初は1人の女子がいじめをうけてしまうところから始まりますが、後半に行くにつれ明るい方向へ進んで行きます。この徐々に話が進んで行く感じがスッと胸にはいってきますね。
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